Oリングをはじめとするシール材(パッキンやガスケット)を適正にお選び頂く為に、規格や仕様ほか、生産や設計、使用などに係る幅広い専門用語をまとめて解説いたします。製品の選定と最終的な判断はお客様ご自身にお願いしておりますが、参考として活用して頂ければ幸いです。
アウターリングとは、NW/KFセンターリングに於いて、Оリングの外側に取り付けられる金属環のことです。逆圧(外部が真空)用途に於いて、Оリングの外周を固定する為に使用されます。尚、正圧(内部が真空)用途では不要となることから、必ず付属しているインナーリングと比較して、あまり多くは使われていません。
アウトガスとは、ゴム材質から揮発するポリマーや配合剤といった成分のことです。微量ながら、半導体製造装置などの低パーティクル性が要求される環境では汚染の原因になったり、高真空環境では真空度を低下させたりといった影響があります。
アクリルゴムとは、原料ゴムのひとつであり、アクリル酸エステルを主成分とするゴムの総称です。フッ素ゴム(FKM)に次ぐ耐熱性や耐油性を備えており、その下位互換として広く用いられています。尚、フッ素ゴムを最も得意としている桜シール社ではアクリルゴムの価格優位性が発揮され難く、あまり多くは生産していません。ACM。Acrylic Rubber。
アクリル樹脂とは、メタクリル酸メチルを重合した非晶質の無色透明な樹脂のことです。ポリメタクリル酸メチル。PMMA。Acrylic Resin。
アクリロニトリルブタジエンゴムとは、原料ゴムのひとつであるニトリルゴム(NBR)の正式名称です。NBR-70-1(1A)やNBR-90(1B)をはじめとするOリング材質(ゴム材質)に用いられています。NBR。Acrylonitrile-Butadiene Rubber。
アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂とは、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを主成分とする熱可塑性樹脂の総称です。成形性に優れています。Acrylonitrile-Butadiene-Styrene Resin。ABS樹脂。
圧縮永久歪みとは、潰した(圧縮した)ゴム材質が一定の状態までしか復元せず、変形して戻らないことです。Oリングの寿命を計る指針として効果が高く、圧縮永久歪み試験から「圧縮永久歪み率(%)=(潰す前の試験片厚み−潰した後の試験片厚み)/つぶし代×100」を求めて評価するのが一般的です。コンプレッションセット。<JIS K 6262, ISO 815>
圧縮成形とは、Oリングなどのゴム製品の製造工程、若しくはその工程を含む製造方法のことです。キャビティーにゴムコンパウンドが入った状態の金型を加熱した加硫プレスの熱板に設置し、熱板を通じて金型を加圧することで架橋と成形を同時に行います。プレス成形。
Oリングに於いて圧縮率とは、つぶし代(Oリング線径を潰した距離)が、潰す前のOリング線径に対して何%であるかを表しています。つぶし率。
Oリングなどのシール製品に於いて圧力とは、通常は単位面積当たりにかかる密封対象からの力のことを指します。単位としてMPa(メガパスカル)を用いて表わすのが一般的です。
アフラスは、原料ゴム或いはゴム材質としてのFEPM(テトラフルオロエチレン・プロピレン系フッ素ゴム)に対する通称として広く用いられています。但し、厳密にはAGC旭硝子社の生産する原料ゴム(FEPMほか)に係る商品名です。AFLAS®。
網目構造とは、ゴム材質に於いて、多数の高分子鎖が互いに架橋して三次元的に網目状になっている分子構造のことです。三次元網目構造。
網目密度とは、ゴム材質の単位体積中に存在する架橋点の数のことです。物理的性質の支配因子の一つで、一般に網目密度が高くなるほど弾性率は高く、伸び率と膨潤度は小さくなります。架橋密度。
アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物は、半導体基板や電子部品などの洗浄剤として有効です。腐食性が高い薬品なので、接触するOリングなどのゴム製品にはパーフロ(FFKM)系やアフラス(FEPM)系の高機能材質を用いる必要があります。
アモルファスとは、原子や分子が不規則な空間配位をして、結晶にあるような周期性が存在しない状態のことです。ゴム材質はアモルファスで、常温はガラス転移温度以上であることから軟らかくなります。非晶質。
あり溝とは、Oリング溝の断面形状のひとつです。溝自体でOリングをくわえ込むような構造をしている為、Oリングが溝から脱落するのを防止する効果があります。但し、装着時にOリングが傷付き易い点には注意が必要です。
アルカリ性の液体は、油や蛋白質といった有機物に対する洗浄剤として有効です。接触するOリングなどのゴム製品には、エチレンプロピレンゴム(EPDM)系などの材質が多く用いられています。尚、強アルカリに対しては、高機能ゴム材質を用いる必要があります。
メタノールまたはエタノールを混合した燃料油には、バイオエタノールを混合したガソリン(バイオマス燃料)などがあります。接触するOリングなどのゴム製品には、HNBR-70(水素化ニトリルゴム)やフロロパワー3F(3元系フッ素ゴム)といった材質が用いられます。<JIS K 6258, ISO 1817>
工業用や燃料用として広く使用されているエタノールやメタノール、イソプロピルアルコールですが、その中でも腐食性の高いメタノールに接触するOリングなどのゴム製品には、フロロパワー3F(3元系フッ素ゴム)などの高機能材質を用いる必要があります。
安全データシートとは、対象となる化学物質を含む製品を提供する際、その化学物質に関する情報を供給する為の書類です。桜シールOリングについては、材質別の発行を行っています。MSDS。
硫黄加硫とは、硫黄を添加して架橋を行うことです。ジエン系合成ゴムの架橋では、最も多く採用されている方法です。
硫黄変性クロロプレンゴムとは、原料ゴムのひとつです。クロロプレンゴム(CR)が開発された当初から存在し、G-タイプとも呼ばれています。クロロプレンと硫黄の共重合体にチウラムジスルフィドを添加して可塑化することにより、使用に適したムーニー粘度に調整されます。
一軸伸長とは、ゴム材質の試験方法のひとつです。短冊状またはダンベル状の試験片を一方向に引っ張ることによって、強度や弾性率を測定します。
一体金型成形とは、Oリングの製造では最も広く採用されている方法です。圧縮成形を分割せずに、1ショット(1回のプレス)ごとで各Oリングに対する架橋と成形を完了します。
インターナルミキサーとは、ゴムコンパウンドの製作に用いられる装置のひとつです。ニーダーなどの回分式混練機のことを指します。密閉型混練機。
インナーリングとは、NW/KFセンターリングに於いて、Оリングの内側に取り付けられる金属環のことです。フランジ装着ガイドとОリングの内側を固定する為に使用されます。
ウェットプロセスとは、液体を用いた処理工程のことです。半導体や液晶の製造工程に於いては、現像、ウェットエッチング(湿式蝕刻)、剥離、CMP(化学物理研磨)、洗浄といった薬品又は純水を用いた処理工程が、ウェットプロセスに該当します。但し、液晶製造工程ではフォトマスクによる感光処理を用いることが少ない為、現像工程は該当しない場合も有ります。ウェットプロセスに用いるOリングなどのゴム製品には、優秀な耐薬品性を有しながら金属溶出の少ない材質が適しています。
ウェルドラインとは、Oリングなどのゴム製品に於ける製造上の成形不良のひとつです。プレス工程でゴムコンパウンドが加硫成形される際、金型内を流れて合流するところに発生する線状の模様のことです。融合不良。
打ち抜き機とは、ゴム製品の打ち抜き裁断に用いる機器のことです。ゴム板からガスケット製品などを打ち抜いたり、Oリングなどのゴム製品からバリを取り除いたりするのに使用されます。<JIS K 6250, ISO 235290>
ウレタンゴムとは、原料ゴムのひとつであり、ウレタン結合を含有する合成ゴムの総称です。極めて優秀な物性を有していますが、耐水性は劣ります。U-70やU-90などのOリング材質(ゴム材質)に用いられています。U。Urethane Rubber。
運動シールとは、回転或いは往復運動する機械部品の隙間から流体の漏れを防ぐ為に使用するシール部品の総称です。運動用Oリングやオイルシールなどが該当します。パッキン。<JIS B 2401, JIS B 2402, JIS B 2403, JIS K 6380>
運動用Oリングとは、摺動面に装着して使用するOリングの総称です。P規格ほか、内径に対して線径が太いサイズが多く用いられます。装着性や摺動性を考慮し、つぶし代を小さく設定することが推奨されます。
エアキズとは、Oリングなどのゴム製品に於ける製造上の成形不良のひとつです。プレス工程でゴムコンパウンドが金型内に空気を包含したまま加硫成形されることで、製品に欠けが発生してしまいます。エア溜まり。
エア溜まりとは、Oリングなどのゴム製品に於ける製造上の成形不良のひとつです。プレス工程でゴムコンパウンドが金型内に空気を包含したまま加硫成形されることで、製品に欠けが発生してしまいます。エアキズ。尚、製品の形状によってはエア抜きが難しい為、意図した場所にエア溜まりを作る場合があります。
エア抜きとは、圧縮成形のプレス工程に於ける作業のひとつです。加硫成形が完了する前に金型への加圧を緩め、キャビティー内に残存している空気を外部へ逃がしてエアキズを防止します。尚、真空成形では省略することができます。バンピング。
永久歪みとは、ゴム材質に対して変形を加え、その負荷から開放して放置しても元に戻らずに残存する歪みのことです。残留歪み。<JIS K 6273, ISO 2285>
液晶とは、固体と液体の中間状態のことですが、一般的には液晶ディスプレイ(LCD)のことを指す略称として使われています。ディスプレイ用の基盤はコンタミネーションを嫌う為、製造装置で使用されるOリングなどのシール製品には、高度な低パーティクル性(耐プラズマ性)を有する高機能ゴム材質が用いられています。
液体クロマトグラフィーとは、移動相に液体を使用するクロマトグラフィーのことで、移動相と固定相の間の分配平衡により分離されます。分離機構により、サイズ排除クロマトグラフィー(サイズにより分別するクロマトグラフィー/Size Exclusion Chromatography/SEC)、吸着クロマトグラフィー(吸着力の差により分別するクロマトグラフィー/Adsorption Chromatography)、分配クロマトグラフィー(溶媒に対する溶解度の違いを利用して分別するクロマトグラフィー/Partition Chromatography)、そしてイオンクロマトグラフィー(電荷を持つ分子を分離するクロマトグラフィー/Ion Chromatography/IC)に分類されます。Liquid Chromatography。LC。<JIS K 0136>
エチレンプロピレンゴムとは、原料ゴムのひとつです。但し、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の通称、若しくは略称として広く用いられており、一般にはそれを指します。Ethylene-Propylene Rubber。
エチレンプロピレンジエンゴムとは、一般にエチレンプロピレンゴムと呼ばれている原料ゴムの正式名称です。EPDM-70をはじめとするOリング材質(ゴム材質)に用いられています。EPDM。Ethylene-Propylene-Diene Terpolymer。
エラストマーとは、常温でゴム弾性を示す高分子物質のことです。合成ゴムによるOリング材質(ゴム材質)は、これに属します。Elastomer。
円筒溝とは、Oリング溝構造のひとつです。運動用と固定用の両方に用いられ、Oリングの内径面または外径面で流体を密封します。
円筒面固定用Oリングとは、円筒溝に固定装着して使用するOリングの総称です。装着性を考慮し、つぶし代を小さく設定することが推奨されます。
エンドレスとは、バックアップリング(Oリング補助部品)の形状のひとつです。強度の高い形状ですが、環状構造に切断面が無いので、Oリング溝の構造によっては装着することが出来ません。T3。
エントロピー弾性とは、応力を加えられて変形したことでエントロピーが低下している状態から、エントロピーが大きい未変形状態に戻ろうとすることに由来する弾性のことです。ゴム材質の弾性では、エントロピー由来の力がエネルギー由来の力に比べて非常に大きくなります。Entropic Elasticity。
オイルシールとは、回転軸にリップ部を押し付け、その接触圧力で流体を密封するシール製品のことです。回転、往復運動用に使われます。<JIS B 2402, ISO 6194>
オープンロールとは、ゴムコンパウンドの製作に用いられる装置のひとつです。かみ合う方向に異速で回転しているロールの間に原料ゴムと配合剤を投入してせん断と伸長を促し、混練りを行います。ミキシングロール。
オーリングとは、断面が正円(楕円などではない)の紐が環状に繋がった形状のことです。ゴム材質によるものは、主に工業用のシール(パッキンやガスケット)として幅広い分野で使用されています。Oリング。<JIS B 2401, JIS B 2410, ISO 3601>
送り加硫成形とは、大口径Oリングなどの製造で採用されている方法です。1個のOリングに対する架橋成形を部分毎に分割して行う製法で、規格外サイズであっても専用金型を必要とせずに、一体金型成形と同等の性能を持ったOリングを生産することが出来ます。送り焼き成形。
送り焼き成形とは、大口径Oリングなどの製造で採用されている方法です。1個のOリングに対する架橋成形を部分毎に分割して行う製法で、規格外サイズであっても専用金型を必要とせずに、一体金型成形と同等の品質を持ったOリングを生産することが出来ます。送り加硫成形。
押出成形とは、ゴム丸紐などの製造で広く採用されている方法です。ゴム材料に圧力を加えて口金(ダイ)から押し出すことで、均一の断面形状を持つゴム紐を生産することが出来ます。但し、一体金型成形や送り加硫成形によって生産された製品と比較すると性能は劣ります。
オゾン亀裂とは、ゴム材質に発生する劣化現象のひとつです。大気中に存在するオゾン(O3)が、原料ゴムの分子構造に含まれる二重結合を酸化切断し、Oリングの表面に無数のひび割れを生じさせてしまいます。ニトリルゴム(NBR)系の材質で顕著に見られる現象です。オゾン劣化。
オゾン劣化とは、ゴム材質に発生する劣化現象のひとつです。大気中に存在するオゾン(O3)が、原料ゴムの分子構造に含まれる二重結合を酸化切断し、Oリングの表面に無数のひび割れを生じさせてしまいます。ニトリルゴム(NBR)系の材質で顕著に見られる現象です。オゾン亀裂。