Oリングをはじめとするシール材(パッキンやガスケット)を適正にお選び頂く為に、規格や仕様ほか、生産や設計、使用などに係る幅広い専門用語をまとめて解説いたします。製品の選定と最終的な判断はお客様ご自身にお願いしておりますが、参考として活用して頂ければ幸いです。
ターポリマーとは、3種のモノマーから得られる共重合体のことです。3元系フッ素ゴムなどが該当します。
ダイとは、ゴム紐などを製造する為の設備(副資材)のひとつです。押出成形に於いて押し出されるゴムを所定の断面形状にする為に取り付ける口金のことを指します。また、ゴムシートなどから所定の形状をした製品を打ち抜く為に使用する刃型(抜き型)のこともダイといいます。
Oリングなどのシール製品に於いて耐圧性とは、シール対象から圧力が掛かってもゴム材質が変形し難い性質のことです。ウレタンゴム(U)系や水素化ニトリルゴム(HNBR)系の材質が際立って優れています。尚、同系列の材質では、硬度が高いものほど良好な耐圧性を有しています。また、バックアップリングを併用することで、Oリングの耐圧性を良化(補佐)することができます。
アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物は、半導体基板や電子部品などの洗浄剤として有効ですが、腐食性が高い薬品です。Oリングなどのゴム製品が接触する場合には、耐アミン性に優れるパーフロ(FFKM)系やアフラス(FEPM)系などの高機能材質を用いる必要があります。
アルカリ性の液体は、油や蛋白質といった有機物に対する洗浄剤として有効です。接触するOリングなどのゴム製品には、エチレンプロピレンゴム(EPDM)系などの耐アルカリ性を有する材質が使用されています。尚、強アルカリに対しては、高機能材質を用いる必要があります。
耐アルコール混合燃料油性とは、メタノールまたはエタノールを混合した燃料油に対するゴム材質の耐久性のことです。アルコール混合燃料油にはバイオエタノールを混合したガソリン(バイオマス燃料)などがあり、HNBR-70やフロロパワー3F(3元系フッ素ゴム)といった材質が適しています。<JIS K 6258, ISO 1817>
工業用や燃料用として広く使用されているエタノールやメタノール、イソプロピルアルコールですが、その中でも腐食性の高いメタノールについては、優れた耐性を持つフロロパワー3F(3元系フッ素ゴム)などの高機能材質を用いる必要があります。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐オゾン性とは、オゾン亀裂に対するゴム材質の抵抗性のことです。ゴム分子鎖を構成する二重結合はオゾンによってイオン付加の反応を受け易く、分子鎖の切断が生じてしまうことがあります。この反応はゴムの表面から進行し、オゾン亀裂を引き起こして製品の性能を損ないます。<JIS K 6259, ISO 1431>
Oリングなどのゴム製品に於いて耐ガソリン性とは、ガソリン(燃料油)に対するゴム材質の耐久性のことで、鉱物油などに対する耐油性よりも条件が厳しくなります。フッ素ゴム(FKM)系の材質ほか、ニトリルゴム(NBR)系の材質でも耐油性が強化されているNBR-70-2(2A)やHNBR-70などが優れています。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐寒性とは、低い温度域でも弾性が保持できるゴム材質の性質のことです。汎用ではシリコーンゴム(VMQ)系やエチレンプロピレンゴム(EPDM)系などの材質が、高機能ゴム材質ではフロロパワーFQ(フルオロシリコーンゴム)やフロロパワーDL(低温用フッ素ゴム)などの耐寒グレードが、優れた耐寒性を有しています。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐久性とは、物理的、若しくは化学的な劣化条件下に於いて、ゴム材質が経時変化(劣化)に対して有する抵抗性のことです。
強アルカリ性の液体は、油や蛋白質といった有機物を分解する強力な薬品として剥離剤などに使用されています。Oリングなどのゴム製品が接触する場合には、耐強アルカリ性に優れるパーフロ(FFKM)系やアフラス(FEPM)系などの高機能材質を用いる必要があります。
酸性度の強い液体は、無機酸(鉱酸)の硝酸や塩酸、硫酸などが代表的ですが、これらは活性な液体である為、ゴム材質の分子構造に反応し易い性質があります。従って、強酸に接触するOリングなどのゴム製品には、高い結合エネルギーと安定した構造を有するFKM(3元系)やFEPM、FFKMなどによる材質を選択する必要があります。
極性基を持つ有機溶媒は、有機物を溶解する性質を持つことから、耐性の低いゴム材質を膨潤させてしまいます。溶解性の弱いエタノールやIPAなどには多くのゴム材質が耐性を示しますが、強力な溶解性を持つMEKやアセトン、メタノールなどに対しては、パーフロ(FFKM)系をはじめとする高機能材質を選択する必要があります。
大口径Oリングとは、内径の大きなOリングのことですが、具体的な寸法が定義されている訳ではありません。一般にはP-400(JIS B 2401)よりも大径のOリングや、送り加硫によって生産されるOリングなどを指します。
Oリングなどのシール製品に於いて耐高真空性とは、高真空の圧力領域でもゴム材質が気体を透過しない性質(ガスバリア性)ことです。フッ素ゴム(FKM)系の材質が優れています。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐候性とは、日光や気温、雨、風といった自然環境に対するゴム材質の抵抗性のことです。原子間の結合エネルギーが高いフッ素ゴム(FKM)系やパーフロ(FFKM)系などの材質が非常に優れているのに対し、主鎖に二重結合を持つニトリルゴム(NBR)系や耐水性が極端に低いウレタンゴム(U)系などの材質は劣っています。
原料ゴムに於いて第三成分とは、主たる二つの構成要素に少量添加することで、機能を付与したり性能を向上させたりする成分のことです。エチレンプロピレンゴム(EPDM)のジエンモノマーや、パーフロ(FFKM)のキュアサイトモノマーなどが相当します。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐蒸気性とは、水蒸気との接触によるゴム材質の性状変化に対する抵抗性のことです。尚、水蒸気の温度が150℃を超える場合は、高機能ゴム(フロロパワーシリーズ)を推奨いたします。耐スチーム性。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐食性とは、酸化によるゴム材質の腐食に対する抵抗性のことです。但し、一般には特に強力な有機溶剤などに対する耐久性を指します。パーフロ(FFKM)系材質をはじめとする高機能ゴム(フロロパワーシリーズ)が優れています。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐水性とは、水との接触によるゴム材質の性状変化に対する抵抗性のことです。尚、ウレタンゴム(U)系などの一部を除いた多くのOリング材質は耐水性を備えていますが、水以外の諸条件も勘案され、水道水で使用されるパッキンにはエチレンプロピレンゴム(EPDM)系の材質が多用されています。
ダイスウェルとは、押出成形でプロファイルされて口金を通過したゴム紐が、使用した口金の寸法よりも膨れる現象のことです。ダイ膨張。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐スチーム性とは、水蒸気との接触によるゴム材質の性状変化に対する抵抗性のことです。尚、水蒸気の温度が150℃を超える場合は、高機能ゴム(フロロパワーシリーズ)を推奨いたします。耐蒸気性。
体積抵抗率とは、試験片を一辺が1mの立方体として、その電気抵抗を換算したものです。単位はΩ・cmで表されます。比抵抗。<JIS K 6271>
体積変化率とは、浸漬試験(耐油試験や耐溶剤試験、耐薬品試験など)に於ける浸漬前後の試験片の体積変化を、初期の体積に対する割合で表したもののことです。
体積膨潤とは、膨潤によって体積が増大する現象のことです。ゴム材質を油や溶剤といった液体に浸漬した際、液体を吸収して膨らむ現象のことを膨潤といいます。
代替フロン用ゴムとは、特定フロンの代替ガスであるハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類やハイドロフルオロカーボン(HFC)に対する耐久性が高いゴム材質のことです。HNBR-70をはじめとする水素化ニトリルゴム(HNBR)系の材質が際立って優れています。
帯電防止ゴムとは、電荷の蓄積を防ぎ、電荷を消失させる程度に導電性を付与したゴム材質のことです。静電気による火災や製品の汚れ防止を目的としており、体積抵抗率で104〜108Ω・cmになる程度に導電性のカーボンブラックが配合されています。静電防止ゴム。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐凍結性とは、凍結によってゴム材質がゴム弾性を失うことに対する抵抗性のことです。フロロパワーFQが際立って優れています。
タイト加硫とは、引張強さ及び弾性が良好な値を示すように十分且つ適切に加硫されたゴム材質の状態を指します。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐熱試験とは、熱(高温)に対する経時変化(熱老化)の抵抗性を評価する試験です。恒温槽の中で所定の温度と時間で加熱したゴム材質について、物理的、化学的な性状変化を観察します。<JIS K 6257, ISO188>
Oリングなどのゴム製品に於いて耐熱性とは、熱(高温)によってゴム材質が老化する(分子の切断が起こり、硬化または軟化に至る)ことに対する抵抗性のことです。フッ素ゴム(FKM)系やパーフロ(FFKM)系の材質は特に秀でており、その中でもフロロパワーFFS(耐熱パーフロ)は際立って優れています。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐燃性とは、火炎接触や加熱環境に於けるゴム材質の着火や燃焼に対する抵抗性のことです。クロロプレンゴム(CR)系やシリコーンゴム(VMQ)系、フッ素ゴム(FKM)系、パーフロ(FFKM)系などの材質が優れています。難燃性。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐燃料油性とは、ガソリンや軽油、灯油などの燃料油に対するゴム材質の耐久性のことで、鉱物油などに対する耐油性よりも条件が厳しくなります。フッ素ゴム(FKM)系の材質ほか、ニトリルゴム(NBR)系の材質でも耐油性が強化されているNBR-70-2(2A)やHNBR-70などが優れています。
非極性溶剤とは、極性基を持たない有機溶媒のことで、油類の延長上にあるものとして捉えることが出来ます。溶解性の弱い燃料油(ガソリンや灯油)などには2元系フッ素ゴム(FKM)や高ニトリルゴム(NBR)といった汎用材質でも耐性を示しますが、溶解性の強いトルエンやベンゼンなどに対しては、高機能ゴム材質を選択する必要があります。
タイプA デュロメータとは、デュロメータ硬さに於いて中硬さ(A20〜A90程度)の試験片に使用する試験機のことです。通常、Oリング材質(ゴム材質)の硬度は中硬さの範囲に含まれます。<JIS K 6253, ISO 48, ISO 7619>
耐プラズマ性とは、プラズマによってラジカルな状態となった気体からの影響を受け難い性質のことです。ラジカルな気体はあらゆる物質にアタックしますが、その中でもゴム材質は特に影響を受け易く、気体の種類によっては架橋が切断されたり、充填物質(パーティクル)が外部に放出されたりといった現象が発生します。
Oリングなどのシール製品に於いて耐ブリスター性とは、急速減圧による製品内部からの破裂(ブリスター現象)に対するゴム材質の耐久性のことです。ISO 23936-2(RGDテスト=耐ブリスター性の試験規格)を認証取得しているフロロパワーFFH90やフロロパワー3F90などが優れています。
大変形とは、ゴム材質の変形が大きく、フックの法則などの微小変形による簡単な解析が出来ない変形のことです。幾何学的非線形性を有します。有限変形。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐放射線性とは、放射線照射によるゴム材質の架橋切断に対する抵抗性のことです。放射線の量子エネルギーは化学結合に比べて著しく高いので、一般に放射線劣化は化学結合エネルギーに依存せず、電子密度の高い原子との結合が切断され易くなります。通常はフッ素ゴム(FKM)系よりもエチレンプロピレンゴム(EPDM)系の材質の方が優れていますが、例外としてアフラス(FEPM)系の材質は際立って優秀な耐放射線性を有しています。
ダイ膨張とは、押出成形でプロファイルされて口金を通過したゴム紐が、使用した口金の寸法よりも膨れる現象のことです。ダイスウェル。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐摩耗性とは、摩擦によって製品の表面が減ったり削れたりするなどの損傷に対するゴム材質の耐久性のことです。Oリングでは、ウレタンゴム(U)系の材質が際立って優れています。摩耗抵抗。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐薬品性とは、化学薬品によってゴム材質が分解や溶解、変質しない性質のことです。尚、耐酸性や耐アルカリ性、耐油性、耐溶剤性といった耐久性だけでなく、厳密には応力や歪みと化学薬品との相乗効果による複合劣化に対する抵抗性のことも含まれています。
ダイヤフラムとは、変形可能な隔膜のことです。往復動させることによって、気体を圧縮したり液体を輸送したりするポンプアキュムレーターとして使用されます。
ダイヤメーターとは、周長(LE)から直径を測ることが出来る計測器のひとつです。Oリング内径(ID)の簡易測定に用いられることがあります。パイメーター。
有機溶剤とは、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称で、極性溶剤と非極性溶剤に分類されます。Oリングなどのゴム製品が接触する場合は、有機溶剤の種類に応じて適切な耐性を持つ材質を選択する必要があります。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐油性とは、油によるゴム材質の性状変化に対する抵抗性のことです。強い極性基を持つものや、充填材の多いもの、架橋密度の高いものほど優れる傾向にあり、フッ素ゴム(FKM)系やニトリルゴム(NBR)系などが該当します。
Oリングなどのゴム製品に於いて耐溶剤性とは、溶剤によるゴム材質の性状変化に対する抵抗性のことです。一般に溶剤の溶解度パラメーターとの差に依存し、差が大きいゴムが高い抵抗性を示します。
耐老化性とは、熱や光、酸素、オゾンなどの影響による経時的な性状変化(老化現象)に対する抵抗性のことです。但し、ゴム材質に於いては、多くの場合は耐熱性(耐熱老化性)のことを指しています。
ダストシールとは、機械装置の内部にダスト(埃などのゴミ)が侵入するのを防ぐ為に用いられる油空圧シリンダー用のシール(スクレーパー)のことです。通常、Oリングやオイルシールなどのパッキン類と併用されます。ワイパー。
縦弾性係数とは、ゴム材質に対する垂直応力とその歪み(伸び)が比例する時の比例定数を指します。ヤング率。
タルクとは、ゴム材質に用いられる原材料(配合剤)のひとつです。水和ケイ酸マグネシウムを主成分とする鱗片状の無機充填材で、非補強性の充填材などとして使用されています。滑石。
ダングリング鎖とは、ゴム材質の網目構造に於ける欠陥のひとつです。鎖の片末端だけが架橋点に結合している為、弾性に寄与しない構造を指します。
炭酸カルシウムとは、ゴム材質に用いられる原材料(配合剤)のひとつです。カルシウムの炭酸塩で、非補強性の充填材などとして使用されています。重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムに分類されます。
弾性とは、外力を受けて変形している物体が、その変形を元に戻そうとする力を持つ性質のことです。弾性変形は、変形から直ちに回復する瞬間弾性と、徐々に回復して変形が消失(弾性余効)する遅延弾性とに分けられます。
弾性係数とは、応力と歪みの間の比例関係を表すのに用いられる定数のことです。ヤング率やポアソン比のほか、広義ではねじれ剛性やばね定数なども含まれます。
弾性限界とは、外力を受けて変形している物体が、外力を取り除いても元の状態に戻らなくなる最小の歪み、または応力のことです。
弾性率とは、外力によってゴム材質に生じる応力と歪みの比のことです。モジュラス。
タンブリングとは、Oリングなどのゴム製品の製造に於いて、仕上げ工程で行われるバリ除去などの外観処理方法のひとつです。半製品を所定の容器に投入してドライアイスなどと一緒に回転させることで、製品の外観を整えます。
ダンベルとは、ゴム材質の引張強さや伸び率、モジュラスの測定に用いる試験片の形状です。<JIS K 6251, ISO 37>
単量体とは、重合によってポリマーを生成する小さな分子量の化合物のことです。モノマー。
置換基効果とは、有機化合物中の水素原子を他の原子などに置き換えることで、化学的な性質が変わることです。原料ゴムに於いては、EPMのエチレン部分を4フッ化エチレンに置き換えたテトラフルオロエチレン・プロピレン系フッ素ゴム(FEPM)などが、置換基効果によって新たな性能を獲得している好例です。
Oリングなどのゴム製品の製造に於いて着色性とは、原料ゴムの配合物などによる色の付き易さを示す性能のことです。顔料との親和性などが関係しますが、その中でもシリコーンゴム(VMQ)などは透明性(可視光の透過率)も高いことから着色が特に容易です。
中高ニトリルゴムとは、原料ゴムのひとつです。結合アクリロニトリル量が重量当たり31〜35%のニトリルゴム(NBR)のことを指し、NBR-70-1(1A)やNBR-90(1B)などのOリング材質(ゴム材質)に用いられています。Medium High Nitrile Rubber。
抽出とは、ゴム材質から特定の成分を、特定の液体と条件の下で選択的に取り出すことです。<JIS K 6229, ISO 1407>
中ニトリルゴムとは、原料ゴムのひとつです。結合アクリロニトリル量が重量当たり25〜30%のニトリルゴム(NBR)のことを指します。Medium Nitrile Rubber。
中溶出性とは、Oリング(ゴム材質)の溶出性に係る4段階の目安(アセトンやトルエン、メタノールといった溶解性の高い液体に対する溶出性を総合的に判断したものであり、液体の種類や溶出物の種類は限定していない参考指標)のひとつです。金属イオン(3周期以降の元素)の溶出量が1ppc(1%)未満のものを指し、医薬品や化学品の製造で選択されることの多いFKM(フッ素ゴム)系やFEPM(アフラス)系などのゴム材質が、これに該当します。
桜シール社に於いて追跡調査とは、Oリングなどの出荷製品について原材料調達から生産、入出庫、出荷に至るまでを追跡(トレース)することを指します。尚、全ての桜シール製品に添付される製品ラベルの情報は、追跡調査の重要記録となります。トレーサビリティー確保の為、大切に保管して下さい。
つぶし代とは、Oリングの使用に於いて線径を圧縮する(潰す)距離のことです。Oリングを適正に機能させる為には、使用箇所(円筒面溝や平面固定溝ほか)などを勘案して、最適なつぶし代を設定する必要があります。
Oリングに於いてつぶし率とは、つぶし代(Oリング線径を潰した距離)が、潰す前のOリング線径に対して何%であるかを表しています。圧縮率。
Oリングなどのゴム製品に於いて低温試験とは、ゴム材質の低温特性(低温での物理的性質)を評価する試験方法のことを指します。低温衝撃ぜい化試験、低温ねじり試験、低温弾性回復試験、そして低温圧縮永久歪み試験の4種類が規定されていますが、Oリングでは低温弾性回復試験が最も効果的な方法として広く採用されています。<JIS K 6261, JIS K 6262, ISO 812, ISO 815, ISO 1432, ISO 2921>
低温衝撃ぜい化試験とは、ゴム材質の低温特性(低温での物理的性質)を評価する為の試験のひとつです。試験片の一端を固定した状態で規定の温度に冷却し、他端に一定の衝撃を与えることで試験片に発生する破壊や亀裂などを確認します。<JIS K 6261, ISO 812>
低温素練りとは、ゴムコンパウンドの製作工程に於いて、原料ゴムの可塑化を目的として室温付近で行う素練りのことです。機械的にせん断力と伸長力を加えることで、分子凝集の解離や分子鎖の切断を促して可塑化させます。尚、通常Oリング材質のゴムコンパウンド製作で高温素練りが用いられることは無い為、一般に低温素練りのことを指して素練りといいます。
低温弾性回復試験とは、ゴム材質の低温特性(低温での物理的性質)を評価する為の試験のひとつです。伸長状態で凍結させた試験片が、その後の温度上昇によって弾性を回復して収縮する能力を測定します。尚、一定速度で温度を上昇させた際に10%収縮する温度をTR10といい、殆どの材質に於いてTR10がOリングとして機能できる限界温度(最低温度)となります。TR試験。<JIS K 6261, ISO 2921>
低温ねじり試験とは、ゴム材質の低温特性(低温での物理的性質)を評価する為の試験のひとつです。凍結温度から室温付近までの温度範囲に於いて、ねじった試験片のねじり角を測定し、ねじり剛性(ねじりに対して復元モーメントを示す性質)を評価します。ゲーマンねじり試験。<JIS K 6261, ISO 1432>
低温曲げ試験とは、ゴム材質の低温特性(低温での物理的性質)を評価する為の試験のひとつです。60mm間隔の平行板に試験片を挟み、規定の低温に規定時間放置した後、平行板の間隔を25mmにして、試験片に発生する亀裂や破壊などを確認します。以前はOリングの耐寒性評価で広く採用されていましたが、現在では低温弾性回復試験(TR試験)が主流となっており、あまり使われていません。
低温用ゴムとは、低い温度域でも弾性が保持できるゴム材質のことです。汎用ではシリコーンゴム(VMQ)系やエチレンプロピレンゴム(EPDM)系などの材質が相当します。また、高機能ゴム材質ではフロロパワーFQ(フルオロシリコーンゴム)やフロロパワーDL(低温用フッ素ゴム)などの耐寒グレードが当て嵌まります。
低ニトリルゴムとは、原料ゴムのひとつです。結合アクリロニトリル量が重量当たり24%以下のニトリルゴム(NBR)のことを指します。Low Nitrile Rubber。
Oリングの低パーティクル性とは、特に液晶や半導体の製造に於けるプラズマガスの作用を受けても、ゴム材質が粒子状の異物(パーティクル)を発生させ難い性質のことです。
低溶出性とは、Oリング(ゴム材質)の溶出性に係る4段階の目安(アセトンやトルエン、メタノールといった溶解性の高い液体に対する溶出性を総合的に判断したものであり、液体の種類や溶出物の種類は限定していない参考指標)のひとつです。金属イオン(3周期以降の元素)の溶出量が10ppm(0.001%)未満のものを指し、半導体製造(洗浄液や処理液)ほか、試薬や医薬品の製造などで選択されることの多いFFKM(パーフロ)系やFFKM-E(バイトンETP)系のゴム材質が、これに該当します。有機化合物であるゴムや樹脂は、炭素や水素、酸素、フッ素といった元素を基軸に構成されています。それらがOリングなどの製品に加工される過程では、添加物として金属元素などが加えられたり、製造過程で金属や人の手が接触したりすることで、意図せず微量な不純物(鉄、ニッケル、ナトリウム、カルシウムなど)が混入することとなります。それらの微細な不純物の溶出が一般的な製品用途で問題となることはまずありませんが、前述のように高い純度の薬品が必要とされる条件下では、溶出物によって薬品の純度が下がるのを避ける為、低溶出性の材質が選択されます。
デイライトとは、Oリングなどのゴム製品の圧縮成形に用いられるプレス成形機に於いて、固定盤と可動盤を最大に開いたときの間隔のことを指します。
テトラフルオロエチレンとは、フッ素ゴムやフッ素樹脂の原料となる化学物質です。非常に重合し易く、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを得ることが出来ます。Tetrafluoroethylene。
テトラフルオロエチレン・プロピレン系フッ素ゴムとは、原料ゴムのひとつです。テトラフルオロエチレンとプロピレンを主成分とする共重合体で、アフラスの通称で広く知られています。特徴的な性能を有し、特に耐塩基性(耐強酸性/耐アルカリ性)に優れています。FEPM。
テフロンは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)といったフッ素樹脂に対する通称として広く用いられています。但し、厳密にはデュポン社(アメリカ合衆国)の生産する各種フッ素樹脂に係る商品名です。Teflon®。
テフロンコートOリングとは、ゴム材質の粘着性による作業性の低下(Oリング同士の貼り付きなど)を軽減することを目的として、表面に5.1〜20.3μm程度のフッ素樹脂(PTFE)コーティングを施したOリングのことです。粘着性を軽減する方法の中では比較的安価ですが、Oリング装着した後に効果は持続しません。Oリングの使用中も長時間に亘って粘着性の低減効果を持続させる必要がある場合は、フロロアップシリーズによるOリング材質を推奨いたします。PTFE被膜Oリング。
テフロンジャケットOリングとは、耐薬品性の補強を目的として強固なフッ素樹脂(FEPやPFA)被覆を施したOリングのことです。非常に優れた耐薬品性を持ちながら比較的安価ですが、ゴム材質と比較して伸長性や復元性は完全に劣り、固定用途以外の使用には適していません。また、パーフロ(FFKM)系の材質ほどの耐薬品性は有していません。現在では新しい高機能ゴムが次々と開発されているので、場合によってはフロロパワーシリーズによるOリング材質を推奨いたします。
デュロメータ硬さとは、スプリング式の試験機によって導き出される硬さの単位です。ばねを介して試験片の表面に押し付けられた押針の押込深さが硬さの尺度となっています。試験片の硬さによって4種類の試験機に分類されますが、一般にOリング材質(ゴム材質)ではタイプA(中硬さ用)が用いられます。Duro。<JIS K 6253, ISO 48, ISO 7619>
添加剤とは、ゴム材質に用いられる原材料に於いて、性質改良の為に加えられる薬品類の総称です。老化防止剤や充填材といった配合剤が該当します。
電気抵抗とは、電流の流れ難さのことです。一般にゴム材質は電気抵抗の大きい(体積抵抗率の高い)物質ですが、導電性の高いカーボンブラックを配合することで、電気抵抗を低下させたものも存在します。
電子線架橋とは、放射線架橋のひとつです。電子加速器による高エネルギーの電子線を原料ゴムに照射することで得られる架橋、若しくはその架橋操作のことを指します。特殊な設備が必要となることから一般に用いられることはありませんが、硫黄加硫や過酸化物架橋には無い特殊な効果を得ることが出来る為、桜シール製品でも一部のゴム材質に採用しています。EB架橋。
天然ゴムとは、生育している植物中で生成されるゴムの総称です。タイヤや防振ゴムに大量に用いられており、機械的性質や耐摩耗性は合成ゴムよりも優れていますが、Oリングなどのシール製品で使用されることは稀です。NR。Natural Rubber。<JIS K 6352, ISO 1658>
Oリングの外観基準に於いて等級とは、未使用Oリングの表面欠陥に対する3段階の許容限度のことです。JIS B 2401では、表面欠陥の種類をバリやひけ(バックラインディング)といった項目に分類し、等級(N、S、及びCS)別に各項目の最大許容限度を規定しています。尚、一般に流通している殆どの規格Oリングは、等級Nに準じて製作されています。グレード。
凍結温度とは、ゴム材質が低温によって急激にゴム弾性を失う温度のことです。ガラス転移温度に対して工学的な立場で用いられ、多くは低温ねじり試験で測定したものを指します。
導電性ゴムとは、特別な充填材(導電性カーボンブラックなど)を加えることで体積抵抗率を108Ω・cm以下まで減じ、導電性を付与したゴム材質のことです。尚、104〜108Ω・cm程度のものは、帯電防止ゴム(静電防止ゴム)と呼ばれて特に区別される場合があります。
動摩擦係数とは、相対滑りをする接触2面間に働く運動を妨げようとする力を、2面間に働く押し付け力で除した値のことです。μで表します。<JIS K 7125, ISO 8295>
透明ゴムとは、可視光の透過率が高いゴム材質のことです。原料ゴムの屈折率に近い充填材などを用いることで、可視光の散乱を抑えることが出来ます。
特殊ゴムとは、汎用ゴムの欠点を改善する目的で合成されたゴム材質、若しくは原料ゴムのことです。一般にはタイヤなどで大量に使用される汎用ゴム(天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)以外のゴムのことを指す場合が多く、ニトリルゴムやシリコーンゴムなども特殊ゴムに含まれます。但し、Oリングなどのシール製品で利用されるゴム材質に於いては、JIS B 2401に規定されている材質や石油系の合成ゴム材質のことを汎用ゴム(材質)とし、パーフルオロエラストマーなどの機能性ゴムによる材質のことを特殊ゴム(材質)と呼ぶのが一般的です。
特殊ワックス系老化防止剤とは、ゴム材質の原材料(配合剤)のひとつです。加硫された後、Oリングなどのゴム製品の表面にブルームして薄い被膜を形成し、大気中の紫外線やオゾンなどによる劣化から製品を保護します。
ドライプロセスとは、液体を用いない処理工程のことです。半導体や液晶の製造工程に於いては、ドライエッチング(乾式蝕刻)、CVD、ALD、PVD、アッシングといった真空や気体を用いた処理工程が、ドライプロセスに該当します。尚、これらの他にも液体を用いない工程として拡散やアニールなどが挙げられますが、これらはヒーティングプロセス(熱処理工程)として区別されるのが一般的です。ドライプロセスに用いるOリングなどのゴム製品には、優秀な耐薬品性と耐プラズマ性を兼ね備える材質が適しています。
トランスファー成形とは、ゴム製品の製造工程、若しくはその工程を含む製造方法のことです。上部にピストンを持つ注入室を設けた金型を用い、注入室に入っているゴムコンパウンドをプレスで加圧することでキャビティーに充填し、架橋と成形を同時に行います。
取り数とは、Oリングなどのゴム製品の製造に用いられる金型に於いて、1面1ショットで生産できる製品の数量を指します。尚、量産では取り数の多い金型ほど生産コストを抑えることが出来ますが、金型が大きくなることでキャビティーごとの寸法差が出易くなる傾向があります。
Oリングを機械(溝)に装着する際、無理な力を加えたり機械の一部に接触したりすることで、Oリングを損傷させてしまうことがあります。ねじれや噛み込みといった装着不備を防止する為にも、十分に注意を払った適切な装着を行って下さい。装着方法。
Oリングの製造に於いてトリミングとは、プレス(圧縮成形)工程が完了してバリが付いたシート状の半製品からバリを取り除く工程のことを指します。食切り溝などを活用して手作業で毟り取る方法のほか、抜き型や自動バリ取り機などを使用する方法が広く採用されています。仕上げ。
トルクとは、物体を回転させる能力の大きさのことです。Oリングを装着した溝部のボルトを締め付けてOリングのつぶし代を確保する際、硬い材質を用いたOリングではボルトの締め付けトルクを高くする必要がある為、溝部の剛性も高く設計するようにします。
トレーサビリティーとは、Oリングなどの出荷製品について原材料調達から生産、入出庫、出荷に至るまでの追跡(トレース)が可能であることを指します。桜シール社が出荷する全ての製品に添付される製品ラベルの情報は、追跡調査の重要記録となります。トレーサビリティー確保の為、大切に保管して下さい。